自己資金なしで新規開業・起業できる?融資や他の資金調達方法も解説
本記事では、自己資金なしで起業するための融資制度や申し込み方法、審査を通過するためのポイント、さらには融資以外の資金調達方法について解説します。これから起業を目指す方は、参考にしてください。
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自己資金なしで起業は可能?
起業・開業時には、法人設立費用や開業費用、事業開始後のランニングコストなど、さまざまな資金が必要となります。しかし、現在は資本金1円から会社設立が可能で、理論上は自己資金なしでも起業ができます。特に、仕入れや事業所の賃貸が不要な業種であれば、比較的少ない費用で開業できる可能性があります。
起業に必要な資金の調達方法を検討する前に、まずは自己資金として認められる資産を確認し、実際にどの程度の自己資金があるのか見直してみましょう。
自己資金とは
自己資金は、事業を始める際の基盤となる重要な資金です。手元にある資金のうち、事業資金として自由に使える資産を指します。金融機関の融資審査では、事業者が自己資金をどの程度準備できているかが重要な判断材料となります。
これは単なる金額の問題だけではありません。自己資金を用意できているということは、事業計画の実現に向けて着実に準備を進めてきた証となるからです。また、自己資金があることで事業開始後の運転資金にも余裕が生まれ、安定した事業運営が期待できます。
ある程度の自己資金を準備することは、金融機関から見ると事業に対する経営者の本気度や責任感を測る重要な指標となっているのです。
自己資金に該当する資産
自己資金として認められる資産は、以下のように幅広く存在します。まず、通常の預貯金に加え、親族からの贈与金や相続で得た資金も自己資金として認められます。会社を退職して起業する場合は、受け取った退職金も自己資金に含めることができます。
【出所が明確で返済の必要がない資産】
● 預貯金
● 贈与により取得したお金
● 退職金
● 相続金
● 生命保険の解約返戻金
● 不動産や財産を売却して得たお金
● 創業準備のためにすでに使った費用(みなし自己資金)
● 第三者割当増資によって出資者から得たお金 など
また、生命保険を解約して得た返戻金や、不動産・車両などの資産を売却して得た資金も自己資金として扱われます。
特筆すべきは「みなし自己資金」という考え方です。これは創業に向けて既に支出した費用、例えば事業に必要な設備や機器の購入費用、店舗の保証金や敷金なども自己資金とみなされます。ただし、これらの支出については領収書などで証明できる必要があります。
株式会社の場合は、第三者割当増資による出資金も自己資金として認められます。これは、返済義務がなく法人の資産として活用できる資金だからです。
自己資金に該当しない資産
自己資金として認められないのは、主に返済義務のある資金です。他の金融機関からの借入金はもちろん、親族や知人からの借入金も、返済が必要な負債であるため自己資金とはみなされません。
また、タンス預金など、通帳に入出金の記録が残っていない現金も自己資金として認められません。これは、資金の出所や資金力を客観的に証明することが難しいためです。
同様に、融資審査のためだけに一時的に借り入れた「見せ金」も自己資金とは認められません。むしろ、見せ金を自己資金として申告して融資を受けることは、金融機関の担当者を欺く行為とみなされ、詐欺罪に問われる可能性もあります。
自己資金ゼロでも融資を受けられる場合がある
自己資金がなくても創業融資を受けられる可能性はあります。特に日本政策金融公庫の「新規開業資金」には、自己資金についての要件は設定されていません。
ただし、日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で約24%となっています。このため、自己資金がない場合、希望する融資額から減額されたり、金利が通常より高めに設定されたりする可能性があります。
融資審査では、自己資金の有無以上に事業計画の内容が重視されます。市場調査に基づく売上予測や、具体的な返済計画など、実現可能性の高い事業計画を立案することで、自己資金がなくても融資を受けられる可能性が高まります。特に、現在勤めている会社と同業種で独立開業する場合や、自治体の特定創業支援事業による支援を受けている場合は、審査に通りやすい傾向があります。
自己資金なしでも受けられる可能性がある創業向け融資
自己資金がなくても利用できる創業向けの融資制度として、以下があります。
● 新規開業資金
● 中小企業経営力強化資金
● 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
● 金融機関の信用保証付き融資
● 自治体の制度融資
それぞれの制度には特徴があり、事業内容や条件によって最適な選択肢が異なります。
以降では、それぞれについて解説します。
新規開業資金
日本政策金融公庫が提供する新規開業資金は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっています。
返済期間は、設備資金の場合20年以内、運転資金の場合は10年以内で、どちらも据置期間を最大5年まで設定可能です。融資の使途は、新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金に限られます。
特に、女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアの方が創業する場合は、基準より低い金利で融資を受けられる可能性があります。また、地域おこし協力隊の任期を終了した方や、Uターン等により地方で新たに事業を始める方なども、優遇条件の対象となります。
中小企業経営力強化資金
認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けながら、経営革新や新事業分野の開拓に取り組む方向けの融資制度です。融資限度額は直接貸付で7億2千万円に上ります。
融資の利用条件には2つのパターンがあります。1つ目は、経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓を行い、事業計画書を策定して認定経営革新等支援機関の指導を受けているケース。2つ目は、中小企業の会計に関する基本要領または指針を適用し、事業計画書を策定するケースです。
この制度の特徴は、認定支援機関のサポートを受けながら事業計画を作成できることです。専門家の指導により、より実現性の高い計画を立案でき、融資審査の通過率を高められる可能性があります。
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
この制度は、スタートアップ企業や新事業展開を目指す企業の財務体質強化を支援する特別な融資制度です。最大の特徴は、この融資による借入金が金融機関の資産査定上、自己資本とみなされることです。
融資限度額は小規模事業者の場合7,200万円、中小企業の場合は1社あたり10億円です。返済期間は5年1ヵ月以上20年以内で、無担保・無保証人での借入が可能です。
融資後は、1年ごとに業績に応じて金利が変動する仕組みとなっています。業績が好調な場合は通常の金利が適用されますが、業績が低調な場合は低い金利が適用され、返済の負担が軽減されます。
金融機関の信用保証付き融資
信用保証協会による保証付きの融資は、自己資金が少ない事業者でも比較的審査を通過しやすい特徴があります。信用保証協会は全国47都道府県と4市に設置されており、中小企業の円滑な資金調達をサポートしています。
この制度の最大のメリットは、無担保で最大3,500万円までの融資を受けられる可能性があることです。一方で、信用保証料が必要となることや、返済不能となった場合は信用保証協会への返済義務が生じることには注意が必要です。
自治体の制度融資
都道府県や市区町村が実施する制度融資は、金融機関・信用保証協会・自治体が連携して行う融資制度です。自治体によって融資条件は異なりますが、一般的に低金利で利用しやすい制度となっています。
例えば、創業後5年未満の事業者や、新たに創業を予定している方を対象とした制度があり、信用保証協会の保証付きで最大3,500万円程度の融資を受けられる場合があります。ただし、この制度はすべての自治体で実施されているわけではないため、事業を予定している地域の自治体に確認する必要があります。
日本政策金融公庫の新規開業資金の申し込み方法

日本政策金融公庫の新規開業資金は、創業時の重要な資金調達手段として多くの起業家に利用されています。申し込みはインターネットや支店窓口で受け付けており、審査から融資実行まで約1ヵ月程度かかります。
以下では、具体的な金利や必要書類、申し込み手順について解説します。
金利・特別利率
新規開業資金の基準金利は事業内容や返済期間によって異なりますが、特定の条件を満たす場合は優遇金利が適用されます。
例えば、女性の方や35歳未満の若手、55歳以上のシニアの方が創業する場合には特別利率が適用されます。また、創業支援等事業による指導を受けて起業する方や、中小企業会計基準を適用する方も優遇の対象となります。
地域振興に関わる創業も優遇されており、地域おこし協力隊の任期終了後に活動地域で起業する場合や、Uターンによる地方創業の場合にも特別利率が適用されます。特に、過疎地域での創業は更に有利な金利条件となります。
申し込みの際の必要書類
融資申し込みには以下の書類が必要です。まず、事業の具体的な計画を記載した創業計画書が基本となります。設備投資を予定している場合は、その見積書も必要です。
● 創業計画書
● 設備資金のお申込の場合は見積書
● 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
● 担保をご希望の場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
● 生活衛生関係の事業者は、都道府県知事の「推せん書」(借入申込金額が500万円以下の場合は不要)または、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」
● 運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)
● 許認可証(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる場合)など
法人の場合は履歴事項全部証明書または登記簿謄本を用意します。担保を設定する場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書が必要となります。
本人確認書類として、運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真と現住所のページ)を提出します。また、飲食店など許認可が必要な事業の場合は、その許認可証も必要です。
生活衛生関係の事業を始める場合は、都道府県知事の「推せん書」、もしくは生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」が必要となります。ただし、借入申込金額が500万円以下の場合は推せん書は不要です。
融資の申し込み手順
まず、事業資金相談ダイヤルに電話して、融資制度や申込手続きについて相談します。この段階で、基本的な事業計画や必要資金について整理しておくと、より具体的なアドバイスを得られます。
次に、インターネットまたは支店窓口で正式な申し込み手続きを行います。オンラインでの申し込みは24時間365日受付可能です。必要書類を提出後、担当者との面談が設定されます。
面談では、資金の使途や事業計画について詳しく説明を求められます。また、店舗や事業所の予定地の確認のため、担当者が実地調査に訪れることもあります。事業計画の実現可能性や返済能力などを総合的に判断して、融資の可否が決定されます。
融資が決定すると契約手続きに入り、必要書類の確認後、指定された銀行口座に融資金が振り込まれます。返済は通常、毎月の分割払いとなり、元金均等返済や元利均等返済、段階的な返済など、事業の特性に応じた返済方法を選択できます。
審査を通過するためのポイント
自己資金なしでの融資審査は通常よりもハードルが高くなりますが、事業の将来性や返済能力を適切に示すことで、審査に通過する可能性を高めることができます。
以下では、自己資金なしでも融資審査を通過するための重要なポイントを解説します。
金融機関による融資審査の具体的な判断基準や通過のためのポイントについては、下記資料で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
詳細な事業計画書を作成する
緻密な事業計画書の作成は、融資審査の成否を左右する重要な要素です。実現可能性が高く説得力のある計画を立案することで、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性が高まります。
市場調査などのエビデンスとなるデータをできるだけ多く収集し、それに基づいた具体的な販売戦略や収支計画を示す必要があります。また、事業に関するリスクを洗い出し、その対策も明記することで、計画の現実性をアピールできます。
資金の使途や返済計画についても、具体的な数字を示しながら無理のない計画を立てることが重要です。特に、事業開始から黒字化までの期間における資金繰りについては、詳細な説明が求められます。
専門家の助けを借りる
認定支援機関に相談し、そのあっせんで融資を申し込むことで、日本政策金融公庫の融資審査に通りやすくなると言われています。専門家のサポートを受けることで、より説得力のある事業計画を作成することができます。
例えば、税理士などの専門家は事業計画書の作成支援サービスを提供しています。経験豊富な専門家のアドバイスを受けることで、さまざまな起業家を支援してきた知見から、より効果的に事業の見通しが伝わる書き方を学ぶことができます。
すでに決まっている契約を証明する
融資申し込みの時点で決まっている契約がある場合、それを積極的にアピールすることで融資を受けられる可能性が高まります。実現可能性の高い売上見込みを提示できれば、自己資金が少なくても支払い能力があると判断される可能性があります。
具体的には、受注が見込める取引先からの発注書や契約書を提示することで、安定した収益が期待できることを示すことができます。特に、継続的な取引が見込める契約は、事業の安定性を示す重要な証拠となります。
現在働いている会社と同業種で開業する
現在の勤務先と同じ業種で独立開業する場合、その実務経験は高く評価されます。業界での経験年数が長ければ長いほど、事業を成功させる可能性が高いとみなされます。
特に6年以上同じ業種で働いている場合、日本政策金融公庫の新創業融資制度において自己資金要件が免除される可能性があります。また、勤務時代の実績や見込み顧客についても具体的に示すことで、事業の実現可能性をより強くアピールすることができます。
自己資金なしで融資を受ける際に注意すべき点

自己資金なしで創業融資を利用する場合、いくつかの重要な注意点があります。融資を受けられても、自己資金がある場合と比べて条件面で不利になることが多く、事業の継続性に影響を与える可能性もあります。以下は、特に重要な注意点です。
● 融資額が少なくなる
● 金利が高くなる
● 一時的な「見せ金」は避ける
● 返済計画を入念に立てる
これらの点について十分に理解し、対策を講じることで、より安定した事業運営が可能になります。
融資額が少なくなる
一般的に融資額は自己資金の3~4倍程度が目安とされています。そのため、自己資金がない場合は希望する融資額を下回る可能性が高くなります。日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均約24%となっています。
融資額が希望を下回った場合、事業開始後の運転資金が不足するリスクがあります。そのため、初期投資を必要最小限に抑えたり、段階的に設備投資を行ったりするなど、融資額に見合った事業計画の見直しが必要となります。
金利が高くなる
自己資金がない場合、金融機関にとってはリスクが高いと判断されるため、金利が通常より高めに設定されることがあります。特に信用保証協会の保証付き融資の場合、自己資金がないと1~2%程度金利が上乗せされる可能性があります。
返済時の負担を考えると、できるだけ低金利の融資を探すことが重要です。日本政策金融公庫の新規開業資金など、公的融資制度を活用することで、比較的低金利での借入が可能な場合もあります。
一時的な「見せ金」は避ける
融資審査のために一時的に第三者から資金を借りて自己資金を装う「見せ金」は、絶対に避けるべきです。見せ金による融資申請は、金融機関の担当者を騙して金銭を得る行為とみなされ、詐欺罪に問われる可能性があります。
見せ金が発覚した場合、将来の融資を受けにくくなったり、金融機関から融資の返還を求められたりする可能性があります。融資申請時は、正直に自己資金の状況を説明し、その上で事業の将来性や返済能力をアピールすることが重要です。
返済計画を入念に立てる
自己資金なしで事業を始める場合、当面の運転資金を含めた開業費用のすべてを借入金でまかなうことになります。そのため、事業開始後の売上だけで融資額に利息を加えた金額を返済していく必要があります。
毎月の経費支払いや税金の納付なども考慮に入れながら、収入と支出をシミュレーションする必要があります。日本政策金融公庫の融資制度には、元本返済を据え置いて利息のみを支払う据置期間を設定できるものもありますので、このような制度を活用して無理のない返済計画を立てることが重要です。
融資のために資金を増やすには

手持ちの現金がない状態でも、実は自己資金として認められる資産や方法が複数存在します。コツコツと貯金する以外にも、以下のような方法で自己資金を確保することが可能です。
● 現物資産を申告する
● みなし自己資金を申告する
● 家族・親族から贈与を受ける
● 保険を解約する
● 資産を売却する
● 退職金を受け取る
● 副業から始めて資金を貯める
これらの方法を組み合わせることで、より多くの自己資金を用意することができます。
現物資産を申告する
創業時に必要な設備などをもともと自分が持っていた場合、その「物」を自己資金として認めてもらえる可能性があります。これを「現物出資」と呼び、不動産やパソコン、OA機器、有価証券などが該当します。
事業で扱う商品やその原材料なども、現物資産として認められます。ただし、評価額は購入時の価格ではなく、時価相場の価格となる点に注意が必要です。自己資金として申告する際は、現在の市場価値を適切に見積もる必要があります。
みなし自己資金を申告する
事業のために起業前に使った費用も、「みなし自己資金」として自己資金に含めることができます。事業を直接的な用途として購入した製造機器やパソコン、営業車両などの費用が該当します。
これらの支出については、購入時の領収書や口座からの引き落とし履歴など、「本来はあった自己資金でこれらを購入した」ということが証明できる資料を、融資申し込みの際に提示する必要があります。
家族・親族から贈与を受ける
親族からの資金提供は、借入金ではなく贈与の形をとれば自己資金として認められます。贈与契約書などの正式な文書を作成することが重要で、これがないと「融資を受けるために一時的に借りたお金を『贈与』と偽っている」という疑いをもたれる可能性があります。
親族にもその旨を納得してもらい、もし融資審査の担当者から問い合わせがあった際に、きちんと説明してもらえるようにしておく必要があります。なお、年間110万円を超える贈与には贈与税が課せられるため注意が必要です。
保険を解約する
積立金のある保険を契約している場合、解約して得られる返戻金を自己資金として活用できます。ただし、解約して返戻金が入金されてからでなければ、自己資金として扱うことができません。
もしこの方法を選ぶ場合は、融資申請前に積立金が口座に入るよう、早めに手続きを進める必要があります。将来的なリスク管理の観点から、保険の解約は慎重に検討すべきです。
資産を売却する
不動産や車両など、ある程度価値のある資産を持っている場合、それを売却して自己資金にすることができます。事業には使用せず、売却しても日常生活や事業運営に支障がない資産が対象となります。
売却による資金調達は、返済義務のない資金を得られる方法として有効です。ただし、売却後の生活や事業への影響を十分に考慮する必要があります。
退職金を受け取る
勤めている会社を辞めて開業する場合、退職金は自己資金として認められます。まだ受け取っていない退職金でも、勤務先の会社から「退職金を支払う」ことを証明する書類をもらえれば、「受け取り予定」として自己資金に組み入れられる可能性があります。
退職金は比較的まとまった金額となることが多く、創業時の重要な資金源となりえます。ただし、退職後の生活資金との兼ね合いも考慮して、充当する金額を決める必要があります。
副業から始めて資金を貯める
起業を急いでいない場合は、まずは副業として事業を始め、資金を貯めながら徐々に本格的な事業化を目指す方法もあります。特に、オンラインでのビジネスや店舗の間借りなど、初期投資を抑えられる形態から始めることで、リスクを最小限に抑えられます。
この方法の利点は、実際の市場でビジネスモデルを検証できることです。顧客ニーズの把握や運営ノウハウの蓄積など、将来の本格展開に向けた経験を積むこともできます。
融資以外の資金調達方法

自己資金がなく、融資の審査にも不安がある場合は、他の資金調達方法も検討する価値があります。返済不要の資金調達や、より柔軟な条件での資金確保が可能な方法もありますので、事業の特性に合わせて最適な方法を選びましょう。
出資を募る
クラウドファンディングや投資家からの出資は、返済義務のない資金を調達できる方法として注目されています。インターネットの普及により、クラウドファンディングサイトを通じて、事業内容や目的を掲載するだけで簡単に資金調達を始められるようになりました。
クラウドファンディングで成功するためには、出資するメリットを明確に提示する必要があります。例えば、製品やサービスの先行予約権、限定商品の提供、事業への参加機会など、出資者にとって魅力的な特典を用意することが重要です。
また、事業の新規性や社会的意義、市場性などについて具体的に説明することで、多くの支援者から共感を得られやすくなります。投資家からの出資を募る場合も同様に、事業の将来性や収益モデルを明確に示すことが求められます。
共同経営者と協力する
共同経営者との協力は、資金面だけでなく事業運営の面でもメリットがあります。例えば、自分が事業のアイデアや技術を持っていて、相手が資金と経営ノウハウを持っているといった、お互いの強みを活かした協力関係を築くことができます。
共同経営者の資産は自己資金として認められるため、融資審査でも有利に働きます。また、共同経営者が十分な資金を持っている場合は、融資を受けずに事業を開始できる可能性もあります。
ただし、共同経営者との関係は長期的なものとなるため、事業の方向性や利益の配分、意思決定の方法など、事前に十分な話し合いと明確な合意が必要です。
補助金・助成金を利用する
補助金や助成金は、返済不要の公的支援制度として重要な資金調達手段です。中小企業でよく使われるものには、ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築補助金などがあります。また、キャリアアップ助成金や人材確保等支援助成金など、人材関連の支援制度も充実しています。
ただし、申請にあたっては厳しい要件や資格、審査があります。また、補助金は原則として後払いとなるため、いったん自己資金で支出する必要があります。事前に十分な計画を立て、申請から受給までのスケジュールを見据えた資金計画が重要です。
創業資金を対象とした創業補助金もございます。詳細は下記記事をご覧ください。
【記事】創業補助金とは?採択要件やメリット・デメリットを解説
カードローンを利用する
カードローンは、銀行系とノンバンク系があり、それぞれ特徴が異なります。銀行系は金利が比較的低めですが審査が厳しく、ノンバンク系は審査が比較的緩やかですが金利が高めとなります。
限度額は数十万円から1,000万円程度まで幅広く、必要な金額に応じて選択できます。また、一度契約すれば限度額の範囲内で何度でも借り入れができ、返済後は再度借り入れることも可能です。
しかし、金利が年率14~18%程度と高いため、返済負担が大きくなりやすいという欠点があります。そのため、運転資金の一時的な補填など、短期的な資金需要への対応に限定して利用することが賢明です。
事業用途でカードローンを利用する場合は、ビジネスカードの併用もおすすめです。経費の支払いや管理が効率化できるほか、ポイント還元やキャッシュバックなどの特典も活用できます。ただし、カード決済の支払いサイクルと資金繰りのバランスには十分な注意が必要です。
自己資金なしでも新規開業は可能
自己資金がなくても、適切な資金調達方法を選択することで新規開業は十分に実現可能です。融資制度の活用や資産の見直し、副業からの開始など、さまざまな選択肢を組み合わせることで、着実に事業を立ち上げることができます。
資金調達を始める前に、まずはビジネスカードの活用を検討してみましょう。例えば、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カードを使えば、事業での支出でポイントやマイルが貯まり、経費の管理も容易になります。支払いは最長56日後まで猶予があるため、キャッシュフローにも余裕が生まれます。
また、このカードを保有していれば、ビジネスサポートローンも利用可能です。最大950万円までの融資を、通常のキャッシングよりも低金利(2.8%~9.6%)で受けられます。さらに、支払い.comのようなサービスを活用すれば、請求書の支払いを最長60日後まで延ばすことができ、資金繰りの改善にも役立ちます。
ただし、融資を受ける際は返済計画をしっかりと立て、無理のない範囲で事業を進めることが重要です。創業時から堅実な経営を心がけることで、持続可能な事業成長を実現できるでしょう。